建軍90周年記念活動------習近平の軍事戦略

建軍90周年記念活動------習近平の軍事戦略NEW2017-08-0211:58:56

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8/2(水)11:21

遠藤誉東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

建軍90周年記念活動から読み解く習近平の軍事戦略7月30日から8月1日にかけて中国人民解放軍建軍90周年記念活動が行われた。野戦軍事パレードと人民大会堂における習近平の講演から、中国の軍事的即戦力と軍民融合に関する戦略と野望を読み解く。

中国人民解放軍建軍90周年内モンゴル軍事訓練基地で軍事パレード写真ロイター/アフロ

建軍後初めて行われた建軍記念日における軍事パレード

習近平政権になってからの軍事パレードに関する3つの初めて2015年9月3日、中国は建国後初めて、建国記念日国慶節10月1日以外の記念日に軍事パレードを行なった。すなわち抗日戦争勝利記念日である9月3日前に軍事パレードを行なったのは、建国後初めてのことである。

これは習近平政権になってから最初の軍事パレードに関する初めてだった。

しかし、この軍事パレードは国慶節軍事パレード同様、天安門広場で行なわれた。

このたび、中国人民解放軍の建軍記念日である8月1日実際は2日前の7月30日に軍事パレードを行なったのは、建軍後も、建国後も、やはり初めてのことで、これは習近平政権になってから二つ目の軍事パレードに関する初めてとなった。

おまけに軍事パレードは天安門広場でなく、内モンゴルの軍事訓練基地という、式典とはほど遠い戦場現場を再現したような訓練場で行なわれた。場所と時間が発表されたのは、軍事パレード開催の、わずか14時間前のことだ。これもまた戦場現場の即戦性を象徴している印象を与えた。

実は7月30日午前9時16分にアップしたコラム稲田防衛大臣辞任、中国でトップニュース扱い建軍90周年記念を前にを書いている最中に、具体的な場所と日時が発表され、筆者は慌ててその情報を加筆した。ついでながら、このコラムは30日の黎明に、新しいニュースを受けながら書いた。

具体的な場所は朱日和というアジア最大の軍事演習基地。内モンゴル自治区錫林郭勒盟スニタ右旗の南部にあり、zhu-ri-heと発音し、蒙古語で心臓という意味だ。1957年に毛沢東が戦車の秘密軍事訓練基地として選んだ場所である。

このように、天安門広場以外の場所で軍事パレードが開催されたということが、習近平政権の3つ目の軍事パレードに関する初めてだ。

なぜ軍事訓練基地を選んだのかではなぜ軍事パレードを行なう場所が北京の天安門広場でなく、朱日和軍事訓練基地だったのか。それは野戦区における即戦力と軍事大改革の成果を顕示するためである。

2016年1月2日のコラム中国、軍の大規模改革即戦力向上と効率化に書いたように、習近平は2015年12月31日、中央軍事委員会主席として、中国建国後初めての大規模な軍事改革を行なった。

それまでの陸軍の7大軍区を撤廃して、5大戦区東部南部西部北部中部戦区を設置し、さらにいざというときには、習近平中央軍事委員会主席中共中央総書記が直接指令を下せば戦区と軍種陸海空軍ロケット軍戦略支援部隊が一斉に動くという形にした。

これは建国以来、旧ソ連を模倣してきたのを撤廃して、アメリカ大統領のように、国のトップが軍の最高司令官として直接命令を下すことができる命令指揮系統に持っていきたかったからだ。それまでの7大軍区を治める総参謀部、総政治部、総装備部、総后勤部は腐敗の坩堝るつぼと化していただけでなく、命令指揮系統をだぶつかせていたので、それらの迂回ルートも撤廃した。

アメリカ式に転換することによって、アメリカに追いつき追い越せという軍事戦略を実施していき、効率と即戦力を高め、軍事的にも世界のトップに立とうという野望に満ちた軍事大改革だった。

だからこそ、今般の建軍90周年記念の軍事パレードでは、野戦軍の真っただ中で、迷彩色の軍服に身を包んで軍事訓練基地で行なったのだ。中国語では軍事パレードという言葉を使わず、閲兵式と称しているが、誰か他人に見せる儀礼的なものではなく、砂塵舞う中で、兵士が軍用トラックに駆け付け乗り込むという段階からスタートした実践的な野戦状況を再現した閲兵式だった。だから儀仗兵はいない。

習近平は自分がその野戦の現場にいることと、兵士たちと同じ迷彩色の軍服を着用することによって、野戦現場の総司令官が習近平であるということと、軍は党の総書記の命令のもとにあるということを、兵士全員に深く印象付けることが目的であったと言っても過言ではない。

訓練が行き届いているせいもあろうが、兵士一人一人の目と表情は、習近平一点に精神の全てを注いでいるという緊張感と覚悟に満ちていた。

ふと、日本の防衛省のダラダラと長引いた不祥事を連想し、これは憲法改正以前の問題だろうと、嘆かわしい気持ちになったものだ。

軍民融合人民大会堂における習近平のスピーチ7月31日は人民大会堂で盛大な晩餐会が開催され、8月1日午前10時北京時間から、人民大会堂習近平のスピーチがあった。

筆者として印象に残ったのは二つの言葉。

一つはどんなに先進的な武器を持っていたとしても、戦う精神が十分でなければ勝利を収めることはできないという主旨の言葉と軍民融合を強調したことである。

前者は、勝利から勝利へあるいはいつでも戦うことができ、戦ったら必ず勝つといった数多くのスローガンにより、これまでも強軍大国化として言われてきた言葉ではあるが、もっと重要なのは党の精神に従い、党の指示が全てだという党への絶対的な、永遠の忠誠がなければならないと言ったことである。

逆から見れば、ここまで強烈に党への忠誠を誓わせないと、人心が離れていくことへの恐怖があるのだろうということが透けて見える。

後者の軍民融合は注目しなければならない。

これはハイテク化されていく軍事力の中で、科学技術を民間企業にも担わせるという軍事産業の奨励を指示した言葉だ。

2015年3月12日、全人代全国人民代表大会が開催されている最中の中国人民解放軍代表団全体会議において、習近平は軍民融合発展計画を国家戦略にレベルアップすると宣言した。

会議では、アメリカでは軍事産業によって国防部は毎年300億ドルの予算節減をしているということが話題になっている。ここでもアメリカに追いつけ追い越せ精神が働いていた。

2017年1月22日に開催した中国共産党中央委員会中共中央政治局会議では、中央軍民融合発展委員会を発足させることを決議し、習近平が委員長を務めることが決まった。

8月1日のスピーチで習近平は軍民融合により、国防を強化することができるとともに、軍事産業を通して経済発展を押し上げると強調した。それが中華民族の偉大なる復興につながるとしながらも、法律に従って実施しなければならないと、当たり前のことを注意し、そこに新たな腐敗が生まれないように釘を刺したのには驚いた。まさに、どんなに最新鋭の武器を揃えても、紅い王朝もまた腐敗で滅びることを習近平自身も懸念している事実を如実に示していると痛感した。

ただ、在米の中国人留学生数は20数万人に達し、在米留学生の約30を占める。しかもほとんどが博士課程だ。彼らがアメリカの先端技術を学んで中国に帰国し、軍民融合の各軍事産業で活躍すれば、民主と言論の自由以外でなら、やがてアメリカに追いつき、追い越すだろう。

少なからぬ日本のメディアあるいはチャイナウォッチャーは、何でも権力闘争に持っていこうとする。それは中国を見る目を曇らせる。軍事に関する習近平の行動の先にあるのは、アメリカを凌駕する強軍大国への野望だ。軍を強化することが、同時に軍事産業として経済を活性化させる。中国は今、宇宙開発にさえ照準を当て重きを置いている。

言論の自由と人間の尊厳のために、筆者は中国共産党政権の思想的および歴史的史実に関する欺瞞に対しては一歩も引かないが、少なくともいや、だからこそ、こういった現実は直視し、日本の国益を損ねないようにしたいと思っている。

遠藤誉東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員教授などを歴任。著書に習近平vsトランプ世界を制するのは誰か飛鳥新社、7月19日発売予定毛沢東日本軍と共謀した男(中文版も?子(チャーズ)中国建国の残火中英文版もチャイナセブン紅い皇帝習近平ネット大国中国言論をめぐる攻防チャイナジャッジ毛沢東になれなかった男中国人が選んだワースト中国人番付やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ中国動漫新人類日本のアニメと漫画が中国を動かすなど多数。